貝が喋る

あぶくのような言葉たち

当然

明日の予定を立てようかな。

 

普段から僕は、結構行き当たりばったりに生きてるんですよ。

お腹がすいたら何か食べて、眠くなったら寝て。

 

一般的な、野生動物と同じですね。

 

ですが今日、とある本を読み終えまして。

その本が

「自分で決めたことを達成すること」

を一つのテーマに据えた、素敵なお話だったんですよ。

 

それを受けて、僕も一つ。

「明日の予定」を考えようと思います。

 

自分で決めるっていうのは、何かを達成するうえで、とても重要な要素ですから。

ここはひとつ、明日という日を有意義な一日にするため、ちょっと本気を出したいと思います。

 

いきますよ。

 

 

午前七時 起床

 

顔を洗って、朝食を食べ、歯を磨く。

寝癖を直して、着替え終える頃には、時計は八時を回っています。

 

八時~ 読書

バイト先の先輩が、面白そうな本を貸してくれたので。

紅茶でも片手に、のんびりそれを読みたいなと。

キリのいいところで終わりましょう。

 

十時 買い出しに行く

明日は水曜日。

近所のスーパーへ、買い物に行く日です。

 

道中、綺麗な女性に会う

当然です。

 

道に迷う彼女を、優雅にエスコートして差し上げる

当然ですね。

 

連絡先を交換して、別れる

当然ですよ。もちろん。

 

買い物を終えて、帰宅

 

十二時 昼食

残り物を温めましょう。

 

一時 外から悲鳴が聞こえる

慌てて僕は、階下へ駆けつけます。

 

小さい女の子が、わるいひとたちに襲われてる

「怖がってますよ、やめてあげてください」

「なんだてめぇは」「なめとんのか」

「…やれやれ」

 

華麗に撃退

はい当然。

 

わるいひとたち、逃げる

「お兄ちゃん、ありがとう‼」

「いやいや、当然のことをしたまでですよ」

 

女の子を、家まで送ってあげる

「ここが私のおうち!」

「あ、ご近所さんなんだね」

 

ピーンポーン

「はーい」

ガチャ

 

「あら!」

「おや」

 

二時 再開

「君は、さっきの…」

「あなたは、先ほどの…」

「え、お姉ちゃんたち、知り合い⁈」

 

女の子が、経緯を説明

「まぁ、そんなことが…

本当に、重ね重ね、何とお礼を申し上げたらよいか…」

「いえ、当然のことをしたまでです」

 

「よかったら、お茶でもご一緒にどうですか?」

「え、いいんですか?ではお言葉に甘えて…」

 

談笑

彼女は、お姉さんと妹さんの、二人暮らし。

和やかなムードの中、妹の理奈ちゃんが無邪気に言う。

 

「お姉ちゃん、お兄ちゃんのこと好きなのー?」

「こ、こらっ理奈!」

「うーんとね、初めて会った時から

すごく綺麗だな、って思ってた」

「か、貝さん‼//」

 

ーーー

 

五時 帰宅

「じゃあ、僕はそろそろ…」

 

と思いきや

 

「あの、ご迷惑でなかったら、晩御飯ご一緒にいかがですか?」

「…え」

「ご飯は、みんなで食べたほうが楽しいので!」

「お兄ちゃん、一緒に食べよー!」

「いいんですか⁈」

「もちろん!

あ、何かご予定がおありでしたら、無理はなさらず…」

「全然ないです!暇です‼」

「よかった!

では、簡単なものしかありませんが、すぐ作りますね!」

 

料理をする彼女

「…あの、すみません、この食器、洗っちゃって大丈夫ですか?」

「あ、いえいえそんな!

貝さんは、ゆっくり待っててください!」

「いえいえ笑

洗い物くらい、させてください」

「すみません、助かります…」

 

六時 会食

「「「いただきまーす‼」」」

 

「あ、美味しい!」

「本当ですか!嬉しい!」

「このニンジン、理奈が切ったんだよー!」

「お、偉いね理奈ちゃん!

僕実は、まだニンジン切れないんだよ」

当然です。

 

八時 食べ終わり、片付けも一段落

 

「すごくおいしかったです。ありがとうございます」

「いえいえ、そんな…」

「お姉ちゃん、眠くなってきたー」

 

頃合いかな…

「じゃ、僕はそろそろ、お暇します」

「え」

 

一瞬、彼女の顔に陰が差す。

 

が、すぐに明るい笑顔を作る。

「本当に、今日はありがとうございました」

「いえいえこちらこそ、本当にお世話になりました」

「お兄ちゃん、また会おうねー!」

 

帰宅

 

しばらく、家で悶々とする

 

九時 思い切って電話

トゥルルルルル…

 

「はい」

「あ、えっと、理央さんですか?」

「あ、貝さん!」

「すみません、先ほど別れたばかりなのに。

いてもたってもいられなくて…」

「いえ、そんなこと。

あの、それでどういったご用件で?」

「あの…」

 

沈黙

 

「…理央さん、今週の日曜日とか、ご予定有りますか?」

「え…

いえ、あの、特には…」

「でしたら、その…」

「………」

「ど、どこか、二人で出かけませんか⁈」

「‼」

 

沈黙(再び)

「…いい、ですよ」

「‼

ありがとうございます‼

じゃ、また詳しい時間とか、ゆっくり決めていきましょう!」

「理央さん、行きたいところとか、ありますか?」

「えっと、私は…」

to be continued...

 

 

はい。

いかがだったでしょうか。

 

完璧です。

完璧すぎる予定ですね。

 

これで僕には、バラ色の明日が確約されました。

あ、ちなみに理央さんは、似ている芸能人でいうと堀北真希です。

 

楽しみだなぁ明日。どんな服着て…

 

日本

「外出するな。」

 

完。