貝が喋る

あぶくのような言葉たち

右ストレート

コロナにかかった。

40℃以上の熱に浮かされながら、ぼんやりとこのまま死んでも別にいいなと考えていた。特に何か、やり残したことがあるわけではないし、何より疲れた。

ここ最近で僕は、失い過ぎた。

もう積極的に何かをする気もわいてこない。何もしなくて済むのなら、それに越したことはない。そんな思いで目を閉じた時に、ふと思った。

もし僕がこのまま死んだとしたら、葬式で一体、どんな風に語られるのだろう。

きっと、僕の人生が吐くほどきれいに要約されるのだろう。友人や家族に恵まれ、学業に秀で、周囲の人に思いやりを持ち笑顔を絶やさず…

ふざけるな。

世界のくくりの中で、最後まで勝手にいいように扱われ、毒にも薬にもならない終わり方をするのなんて、文字通り死んでもご免だ。

僕の弔い方は、僕が決めるんだ。世界にいいようにされるのだけは絶対に嫌だ。

 

どうやらこれが当面の、生きるモチベーションになりそうだ。生きたい理由も見当たらないが、死にたくない強い理由ができた。

何らかの方法で、世界に一泡吹かせるまでは、死んでたまるか。

 

あいつの顔に思いっきり、右ストレートをぶち込んでやるんだ。