貝が喋る

あぶくのような言葉たち

雪山、一面の白い雪山。

そこに降り注ぐ吹雪は、一粒一粒が鋭くとがって

ゆく人々の肌を的確に、えぐり、切り裂く。

雪の粒が肌に当たるたび、血飛沫が宙に花開いて

ルビーのように輝いて、一瞬の光を焼き付けて

雪の上に、その痕を残す。

 

千切れては、跳ねて

赤いフラッシュがまたたいて、落ちる。

それがすごく、きれいで。

綺麗で綺麗で。

 

僕も、血を流したかったんだ。

その雪が、赤く光った雪が

あまりにも美しかったから。

 

あんなふうに、僕もなれたら。

一瞬の光を残して、溶けて消えるような。

吹雪がかき消すその前に、鮮烈で眩い輝きを残せたら。

 

旅人は一人、また一人と倒れていく。

積み重なる死体の山を、雪が留保もなく埋めていく。

血飛沫の名残だけがそこに残るけど

それさえやがて、歴史が忘れ去ってしまう。

 

さようなら、さようなら。

あなたの名前も知らないけれど。

 

さようなら、さようなら。

その光には、名前もないけど。

 

僕がずっと、忘れないから。

この舞台に立って、踊るから。

 

あなたの死体を、踏み締めて。

あなたの華に、囲まれて。