貝が喋る

あぶくのような言葉たち

back to the dream

「どうしても、行ってしまうの?」


「あぁ、名残惜しいけれどね」


「…行かないで」


「…え?」


「どうして私を置いて行くの?

あなたにとって私は、その程度の存在なの?」


「そんなわけないだろ!

僕が君と会うのを、どれだけ楽しみにしていると思ってるんだ!」


「なら行かないで!

言葉でなく、態度で示して!」


「…僕にも、立場ってものがあるんだ。

わかってくれよ」


「…夜は、あんなに愛し合っていたのに」


「…お前」


「…朝になった途端、冷たいのね」


「僕だって…

君と離れたくなんかない」


「本当?」


「あぁ。

君の温もりを忘れたことなんて、一瞬たりともないさ」


「…嬉しい」


「君がいるから

毎日その日を頑張れてるんだ」


「ありがとう。

嘘でも嬉しいわ」


「嘘なんかじゃない。

現に僕たちこうして、一つになっているじゃないか」


「…なら、もう少しだけ」


「…え」


「もう少しだけ、そばにいて…?」


「…ofuton。」



ーこれは一人の男(貝)が

二度寝をするまでの物語であるー