貝が喋る

あぶくのような言葉たち

言ってみたい

一生に一度は、言ってみたい台詞ってありません?

 

男性だったら子供のころ、漫画の主人公になって敵をなぎ倒すシーンを夢見ただろうし、授業中の教室に入ってきた不審者を、格好よく撃退する妄想を繰り広げたことと思います。

当然ですよね。

 

令和になって、男女平等が謳われていますからね。

今では女性だって不審者と戦うし、右腕に竜を飼ってたりするのでしょう。

「光属性」と「闇属性」でクラス分けが為される時代も、もうすぐそこです。

 

というわけで、考えてみました。

貝の独断と偏見による、「言ってみたいセリフ」best3。

 

特に誰かが幸せになるわけでも、もちろん不幸になるわけでもないランキングです。

自分で言うのもなんですが、昨日野良猫がしたあくびの数、くらいの重要度です。

読者の皆さんに、残っている仕事があったり、かじりかけのパンがあったりするのなら、是非先に書類を作って、パンを食べきっちゃってください。

 

 

さて。

今ここに残られているのは、栄えある暇人諸君と考えて、話を進めていきますね。

 

…あれ、なんか一気に、人の気配がなくなったような…

ちょっと、みなさんせっかくですから、もうちょっと読んでいきましょうよ。

ほら、パンを食べ終わったそこのあなた!

もうすぐ第三位の発表ですよ!

 

 

…ぜぇ、ぜぇ。

なんていうか、本当にパンに負けたとなると、こう、ずしっとくるものがありますね。

あんな小麦粉のかたまりに…

 

気を取り直して、「言ってみたいセリフ」ランキング、第三位から発表していきたいと思います。

 

 

第三位は…

 

ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカ…(ドラムロール)

 

ジャン!

 

 

「マスター、いつもの。」

 

 

やっぱり憧れますよね。

なんていうか、この常連感!

 

アホの松本君、っていう、僕の友人がいるんですけど

今作ったんですけど。

彼は初めていった店(サイゼリヤ)でこのセリフを言い、見事おしぼりとお冷をもらうことに成功したそうです。

 

 

続いて、第二位。

 

ジャカジャカ…(〃)

 

ジャン!

 

 

「ここは俺に任せて、先に行け!」

 

 

いやー、痺れますね。

言い放って殿を務めたキャラクターが、物語の後半重要な部分で、再び登場したりとかね。

「お前…、生きていたのか‼」

ってやつですね。

 

松本君は、友達と行った居酒屋で年齢確認をされたときに、格好よくこのセリフを放ったそうですが

なんとその当時、彼自身も未成年で。

もちろん誰一人、先には行けなかったらしいです。

 

 

お待たせしました、いよいよ栄えある「第一位」の発表です!

 

ジャカ…()

 

ジャン‼

 

 

「名乗るほどのものではありません」

 

 

はいきました、堂々一位!

 

時代劇の名シーンから、職質されたときの言い訳まで、幅広く使えるこのセリフ!

 

やっぱり男たるもの、こういう渋さに憧れますよね。

気ままに一人旅なんかしていて、ふとした時に、こんなセリフを言えちゃう男。

 

というわけで、時は令和。

海辺の町をさすらい歩く一匹狼。名は…、名乗るほどでもない。(僕です。)

一体どんな事件が、彼を待ち受けているのでしょうか。

 

VTR,どうぞ。

 

 

(…おや、これは…)

 

大きく膨らんだ財布を拾う。

 

(…財布だ。落とし主はさぞ困っていることだろう。)

 

…そっと懐にしまう。

 

(いやいやダメだって。

交番に届けよう、交番に。)

 

ー交番ー

 

「お、財布ですか。

ありがとうございます、書類を書かないといけないので、少々お待ちくださいね。」

 

「えーと、お名前は何ですか?」

 

(…きた!)

 

「名乗るほどのものではありません」

 

「…はい?

えっと、お名前や連絡先を教えていただければ

落とした方がお礼をしたい、といった時に、受け取ることができるのですが…」

 

(なんだって⁉)

 

「お礼は大体、金額の一割となっていますね。」

 

(めっちゃ欲しい。)

 

「でしたら、お礼はいらないということで書類作っておきますね。」

 

(いや、ちょ、ま)

 

「ありがとうございましたー」

 

ーーー

 

(…結局、お礼もらえなかった…)

 

(金欠なのに、今…)

 

(昨日おみやげいっぱい買っちゃったし…)

 

(帰ったらみんなに配ろうと思ってさ。

『気ままな一人旅してきたよー!』

『さすらってきたよー!』って)

 

(…なんか違うなぁ…)

 

ぐぅー

 

(…!

お腹すいたな…)

 

(…サイゼリヤあるじゃん

なんか食べてこ)

 

ーーー

 

「いらっしゃいませー!

一名様ですか?」

 

(頷く)

 

「申し訳ありません、ただいま満席で…

そちらに名前を書いてお待ちください!」

 

(!

名前、か…)

 

(名乗るほどのものではありません、と…)

 

…十分後…

 

「お待たせしましたー!

一名様でお待ちの、『名乗るほどのものではありません』様ー!」

 

(!)

 

「ご案内いたします!

こちらへどうぞー!」

 

(…あれ)

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

(ミラノ風ドリア)

 

「かしこまりましたー!」

 

店員さん去る

 

(…え、それだけ?)

 

(もうちょっとなんかあってもよくない?

名乗るほどでもない客が来たんだよ?)

 

(こう、ちょっと笑ってくれるとかさ

『いや、名乗れよ!』とかさ…)

 

(めちゃくちゃ滑ってたじゃん…)

 

(周りにはめっちゃみられるし)

 

「お待たせいたしましたー!

ミラノ風ドリアでございまーす!」

 

(…まぁいいや

食べよ)

 

ーーー

 

(なんか思ってたのと違うなぁ…)

 

「おら!おら!」

 

「へへっ、やっちゃえけんちゃん‼」

 

(お、あれは…)

 

「このやろ、このやろ!」

 

(子供が亀をいじめてる!)

 

Twitter

『亀の甲羅やわらかwww』

って書き込もうぜ」

 

(いじめ方が陰湿)

 

(こら、君たちやめなさい)

 

「うわ、大人の人だ!」

 

「大人の人だ、逃げろー!」

 

(やれやれ…

大丈夫かな?)

 

「助けてくださって、ありがとうございます」

 

(わ、喋った!)

 

「あなたは命の恩人です。

どうか、お礼をさせてください。」

 

(これはもしや、伝説の…)

 

「あの…

お名前は、なんていうのですか?」

 

(…え?

えっと…)

 

「名乗るほどのものではありません」

 

「そうですか…

あの、失礼ですが、身分証などはお持ちでしょうか?」

 

(身分証?)

 

ー学生証を見せるー

 

「貝さん、っていうのですね」

 

(ばれた)

 

「申し訳ありませんが、学生証じゃ効果がなくて…

運転免許証、もしくはパスポートなど、お持ちではないですか?」

 

(むちゃ本格的やん)

 

「身分のわからないものを背中に乗せるなと、乙姫様に固く言いつけられておりますので…」

 

(乙姫厳格)

 

(…免許も、パスポートもないな)

 

「そうですか、でしたら申し訳ありませんが、またの機会に、ということで」

 

(え、そんなことある?)

 

「第二、第三水曜日にこちらの浜辺でいじめられておりますので

また身分証ご持参のうえ、いらしてください。」

 

(定期発生イベントなんだ)

 

「それじゃ。」

 

(帰ってった…

うわ、泳ぐの速!)

 

ーーー

 

(はぁ…

名乗らないって、全然いいことないんだな)

 

(ホテルのフロントで言ったら、追い出されたし)

 

(今夜どうしようかな…)

 

「え、待って、ちょーかわいいじゃん!」

 

「お兄さんお兄さん、一人?」

 

(え、僕⁉)

 

「そーそ、お兄さんだよ!」

 

「めっちゃ汚れてない?どしたの?」

 

(あ、亀とか助けてたんで…)

 

「ハァ!なにそれちょーウケる‼」

 

「ねーねー、お兄さん旅人?

どこ泊ってんの?」

 

(あ。泊るところなくて…)

 

「迷子じゃん、ウケる‼」

 

「ウチら今からカラオケいくんだけどさー

お兄さん一緒にどーよ?」

 

(え、いいんすか⁉)

 

「亀の話とか聞かせてよ!」

 

「お兄さん、名前は?」

 

(………)

 

「貝って言います!

いや、本当助かります!旅先で一人って、めっちゃ寂しいもんっすね!

こんなきれいなお姉さんと遊べるなんて、光栄だなぁ!

いやーそう、今日ずっと一人で歩いてたんすけどねー……

 

FIN.